ひとりしずか                        〜パートナーロスからの再生&その後の成長期〜 

まだまだ伸び代のある「大人の成長期」真っ只中 夫から託された人生をパワーに変え、興味あることに挑戦! 人生有限・躊躇している時間はありません

シマウマのがんを患った夫を看取る


第10首  

コクコクと抗がん剤の点滴が

夫の体に流れて挑む

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夫はZEBRAだった

 

When you hear hoofs, think horses, not zebras.
蹄の音を聞いたら、めったにみられないシマウマではなく、まず馬かなと考えなさい。つまり、「頻度の高い疾患からまず鑑別しなさい。」という意味

  

食道がんの疑いで検査をうけた夫のがんは、

「馬」の扁平上皮がんでも、腺がんでもなく

まさに『ZEBRA』の

小細胞型神経内分泌がんでした。

希少がんの一種です。

食道が原発巣ですが

手術での完治は望めず

肺がんの治療法である

エトポシドとシスプラチンという抗がん剤

4回投与の治療方法が提示されました。

奏功するか、やってみないことにはなんとも言えない状況でした。

今は冷静に当時のことを振り返れますが

その時は、

1秒でも早く抗がん剤の投与が始まって欲しいと

狂わんばかりでした。

その1秒の間にがん細胞がどんどん増殖し

夫の体を蝕んでゆくのが怖かったからです。

9月から治療を始め

12月の4回目の投与後の検査で

がん細胞が消えていました

 

第11首

陰影(かげ)消えて喜び一日(ひとひ)

その後(のち)は

再発する日に怯える睦月

 

2月7日

追加の2回の投与が終わり

再検査

その夜はクラシックコンサートに行きました。

体がキツそうなので

キャンセルを提案したのですが・・・

 

ドボルザーク新世界より

素晴らしい演奏でした

 

第12首 

演奏後拍手惜しまぬ君の手は

来年横にあるのだろうか

  

「再発です。余命は長くて半年でしょう。」

 

2月20日 放射線治療が始まりました。

延命の為だけの治療です。

あっけない程簡単に

リビングニーズ特約の保険金が

振り込まれてしまいました。

保険会社からも認められてしまった・・・。

照射した放射線は体を突き抜け

背中に火傷を作りました。

抗がん剤の後遺症のため

味覚障害が残り、食欲不振

腫瘍熱で38度前後の熱は下がらず、

夜中に何度も着替えが必要でした。

 

第14首 

ただただに夫(つま)の病と向き合うは

我の精神(こころ)も狂わせ始む 

 

夫の体がきついのは勿論です。

しかし、心労と寝不足で

私も相当なダメージを受けていました。

現(うつつ)なのか、夢なのか

昨日のことなのか、明日やることなのか

まともな判断が出来ない自分がいました。

1日前の事が全く思い出せずに

愕然とした日もありました。

食事が上手く取れて

2人で安堵した日も有りましたが、

時は、1つの方向へ向かって

流れいくばかりです。

 

夫は冷静に自分の死と向かい合っていました。

「恐れてはいない。」

「やりたいことは、やった。」

 

ホスピスへ入院して6週間後

夕方5時

夜勤の看護師さんが

交代の挨拶に来て下さった時

夫の呼吸が突然止まりました。

「息をして!!」私が叫ぶと

「ふー。」と息が戻りました。

医師が診察

「家族に至急連絡を。」と告げられました。

長男が 23:00 到着

一晩中、夫の呼吸を感じながら過ごしました。

夫の「この世との別れの瞬間」は

いつ来てしまうのだろう

 

6月7日 翌日早朝

鮮明に覚えています。

夫の最後の呼吸

 

 

第15首 

君去りて妻の肩書き消えし朝

最後に残る”人”として生きむ

 

また、今日という朝がやってきました。

私は生きています。

太陽が昇っていきます。

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今日という1日


では、また。ご機嫌よう。