第90首
天秤はどちらに傾(かし)ぐ 漆黒の
土より出(いで)し 白きアネモネ
法律を学ぶ毎日
点と点は未だ線にならず
「未知」という
巨大な壁に前を塞がれている
しかし
どんなに巨大で厚い壁も
ネズミの如く
少しずつ、少しずつ
かじっていけば
やがては小さな穴を
作ることができるのではないか
そこで
子年生まれの私は
壁をひとかじりしようと
初の裁判傍聴を試みた
目の前に東京地裁
10:00開始の裁判に合わせて
9:30に到着する
入り口でセキュリティーチェックを受ける
予想していたよりも
緊張せず入館できた
初心者には刑事事件の新件が
取り掛かりやすいとのことで
ロビーにある検索用パッドで
いくつかの裁判を選び
法廷番号をメモしてエレベーターで上階へ
1️⃣ 9時45分
10:00開廷の512号法廷
傍聴人入口から入廷すると
前裁判の道交法違反の判決が言い渡される場面だった
傍聴人席20席
傍聴人3人
60キロ制限の道路を
91キロオーバーの151キロで走行
判決 懲役4ヶ月(執行猶予2年)
2️⃣ 10:00開廷 512号法廷 新件
大麻不法所持 30代くらいの男性
傍聴人4人
異議申し立ても
黙秘もなく
淡々と進められていく
4月末の次回に結審まで行う計画を立て終了
3️⃣ 10:35 814号法廷 判決
過失運転致傷(R3年、7月)
傍聴人席20席
傍聴人6人
仕事用の自動車を運転中、信号機に従い右折した際、横断歩道を渡っている人に気づきブレーキを踏んだつもりが、それはアクセルで2人に骨折等の怪我を負わせてしまった。
被告は50代と思しき男性
傍聴席には奥様が。
判決 懲役1年3ヶ月(執行猶予3年)
裁判官が最後に
『執行猶予3年の間に法に触れることをすると、刑が執行されることがありますから、執行猶予期間は細心の注意で悪いことをしないよ うに生活して下さい。』
と、告げた。
私も通勤で自動車を運転していた時期がある。
私が被告として法廷に立つ可能性は、決して少なくはなかったはず。
裁判は遠くの出来事ではない。
4️⃣ 10:45 814号法廷 新件
出入国管理及び難民認定法違反 及び窃盗
上3件の被告は傍聴人用ドアからの出入りだったが、
この新件は手錠をつけた被告人が別のドアから入廷。
ベトナム人の青年
弁護士の他に通訳の女性が付いている。
語学留学生として許可されていた滞在期間が過ぎても帰国せず、日本に滞在。
仕事が得られない日が多くなり、公園で生活。コンビニで親子丼を窃盗。
食パンは所持金で支払えたので購入していた。
新件であったが、初日の25分間の審理で判決。
判決 懲役2年(執行猶予3年)
この後、青年は入国管理局へ引き渡されるそう。
「帰国費用はどうしますか?」
「両親に相談します・・・・」
人が法を用いて人を裁く
バーチャルでは掴みきれない空気が
そこには存在していた
重い1日の終わりに
こうありたいと願う
反対側からも物事を捉えてみる
世論に流されて安易に答えを出さない
真摯に向き合い自分で考え判断する
自ら知ろうと動き出すこと
知ること
経験すること
私の今の行動は
きっと何かを形作るはず
では、また。
御機嫌よう