第46首
竹笊(ざる)にそろり素麺盛り付けて
節くれだった祖父の手想う
地方在住の職人の特集番組
テレビ画面の中で
1本の竹ひごが
生きているかのようにスルスルと動いて
籠が編み進められていく
節くれだった手にズームアップ
祖父の手
農閑期の副業として
独学で竹細工を学び
大きな背負い籠から
小さな笊まで
注文に応じて作っていた
材料を
竹林から切り出し
割り、乾かし
さらに
細く、細く、割って削り
竹ひごを作る
長さ別に、太さ別に
輪を作り
壁にかけて保管する
真っ直ぐな竹が
円形に変わる
冬場は土間に作業場を設え
火鉢で竹を炙って柔らかくし
黙々と編んでいた
その傍で
何年過ごしたことだろう
結婚する時
足付きの笊をお願いした
色の違う竹を編み込み
綺麗な模様入りの笊で
孫娘の旅立ちを祝ってくれた
長年私の料理づくりを支えてくれた笊
今は祖父も
その笊も
この世に存在しないが
思い出は常に傍にある
では、また。
ご機嫌よう