第75首
夫(つま)逝きて空所となりし余生には
いずれの色を塗(まぶ)れば良からむ
2019年6月
沖縄のホスピスで夫を看取り
瀬戸内の島へ帰宅する為
飛行機に搭乗した
島を離れるときは
夫が2枚のエアチケットの手配してくれた
今回は
チケットの予約も
横に夫がいない機内も
空港から自宅までの長距離バスで
一人分の料金を払う事も
初めてのことばかり
これからは
ずっとこれが続く・・・
もうどこへも行かず
ひっそりと過ごそう
最後の放射線治療が終わったら
「一時的に体が楽になる」
と、医師から説明を受けていた
その間に二人で
大塚国際美術館へ行こう
そう決めていた
けれど
夫は治療の後遺症と
腫瘍熱で動けなくなっていた
あの時
寂しそうな顔で夫は何と言った?
「約束を守れなくてごめん。1人になっても行けるか?」
その時
何と私は答えた?
「大丈夫だから。悔やまないで。」
行ってこよう
約束を果たさなければ
夫が逝ってから
半年後の冬
私は計画を立て始める
続く